オレの余剰次元

言いたいことも言えないこんな4次元じゃ

公開日
2022年5月3日
更新日
2022年5月22日

順序構造

対象
大学2.0年
前提知識
集合の基礎,順序集合

順序の定義

回合成流でいくと, という関係は, を有限回 で写すと に一致すること,すなわち です.

定義

順序の定義

に対し, が成り立つとき, または とかく.特に のとき,それぞれ とかく.

集合論的には, として, ともかく,という定義です.

命題

の最小元

.すなわち,

証明

だから

順序であることの証明

まずは補題から.以下, とします.

命題

加法の簡約律

証明

についての帰納法. ならば より, のとき成立. のとき成り立つと仮定すると, だから, のときも成立.

補題

証明

のとき,ある に対し .このとき だから, の後者となりペアノの公理系 (P1)に反する.ゆえに .すると だから,簡約律より

命題

順序の公理

以下が成り立つ.

  1. .(反射律
  2. .(反対象律
  3. .(推移律

は「または」, は「かつ」の意味です.

証明

(1) より

(2) 条件よりある に対し .ゆえに 簡約律より,補題より

(3) 条件よりある に対し,.ゆえに だから

全順序性の証明

補題

証明

() ならば, だから,ある に対し とすると, に反するので .ゆえにある に対し .よって, だから

() ならば,ある に対し, だから とすると,簡約律より で, となり矛盾する.

命題

全順序性

証明

についての帰納法. だから とき成立. を仮定し, のときで場合分けする.

のとき, だから推移律より

のとき, ならば, ならば で,補題より が成り立つ.

どの場合でも が成り立つので, のときも成立.

命題

証明

() 全順序性より, ならば, とすると, ともかけるので矛盾.

() 対偶 を示す. の略記なので,ド・モルガンの法則より は, のこと. のとき,全順序性より のとき,.どの場合でも

もう少しスマートな証明ないかな……(背理法が多いと叱れる……)

定理

整列性

は整列集合である.すなわち,空でない をもつ.

証明

任意の に対し, 以下の数をもつ()ならば が存在することを帰納法で示せばよい. ならば, である.

のとき成り立つと仮定し, とする. 以下の数をもつとき,帰納法の仮定より は存在. 以下の数をもたないとき, である.

最後の議論は直感的な感じがして気持ち悪い人もいると思うので補足します.「 以下の数をもたない」は論理式で と表せ,これを否定すると,全順序集合であることも効いていて, となります.補題より ですので,最終的に です.確かに, の最小元になっています.

(整列順序ならば全順序ですが, の場合,全順序を仮定しないと整列性は証明できないのかな?)

演算と順序

命題

以下が成り立つ.

証明

ならばある に対し .よって, だから,.また, だから,

ここまでの議論で, に我々の直感に合う加法,乗法,整列順序が入ることが分かりました.

自然数の差

のとき,差 を定義します.

定義

差の定義

のとき,ある に対し を満たす がただ一つ存在する.この といい, とかく.

差がただ一つ存在することは,加法の簡約律を根拠とします.すなわち, ならば, で, が成り立つので,差はただ一つに定まります.

に対する は, を満たす で, の前者を表します.

補題

結合法則

のとき,以下が成り立つ:

証明

とおくと,.ゆえに より題意は示された.

補題

分配法則

のとき,以下が成り立つ:

証明

を満たす のことで,両辺 倍すると ゆえに